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けい酸塩系表面含浸材の耐用年数
けい酸塩系表面含浸工法の効果が期待される期間について

【けい酸塩系表面含浸材】の特徴

コンクリートの内部(表層部)を改質するという性質上、適用するコンクリートの性状の影響を大きく受けるため、改質効果の定量化が難しいという特徴があります

農林水産省の開水路補修マニュアルにおける規定

けい酸塩系表面含浸工法の効果が期待される期間【10年程度】

2023年3月に公表された農林水産省 農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路編】において「けい酸塩系表面含浸工法の効果が期待される期間は、10 年」と規定されています。


※コンクリート開水路の接水部と気中部が、けい酸塩系表面含浸工法の対象箇所。


 


農林水産省「農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路編】」より


【解説】


9(1)ア(ア) 適用可能性について


 けい酸塩系表面含浸工法の適用可能性について、表 9.1-2 で示した工法に要求される効果以外の効果について、以下に示す。


 本書で対象とする変状は、表 9.1-2 に示した「中性化」及び「凍害」とする。なお、けい酸塩系表面含浸工法の効果が期待される期間は、10年(9(2)  工法の要求性能・品質規格)としているが、現時点ではけい酸塩系表面含浸工法に耐摩耗性を期待しないことから、摩耗速度の速い水路については工法の適用について検討が必要である。


 また、開水路のアルカリシリカ反応対策及び塩害対策として外部からの劣化因子の侵入抑制効果を期待する場合、補修対象が潜伏期の劣化状態であれば、適用を検討することができる。


 けい酸塩系表面含浸工法のうち、反応型は表面含浸材の反応機構(表 9.1-5  表面含浸材の概要)から、中性化が進行し水酸化カルシウムと炭酸化反応した領域では表面含浸材の性能が発現しないため、適用範囲外となる。適用工法の種類及び施工する母材の状態を十分把握し、適用性について検討すること。


出典:農林水産省.農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路編】.2023年.238頁. 9(1)ア(ア) 適用可能性についてより


 



 


9(2)ア けい酸塩系表面含浸工法(反応型)


けい酸塩系表面含浸工法(反応型)に使用する材料・工法は、表 9.2-1 の品質規格を満足しなければならない。



*1 品質規格値(案)は、JSCE-K 572-2018 による室内試験での規格値となる。


なお、補修の効果が期待される期間は、上記照査方法として示している室内試験と同様に新設構造物に対する効果として、供試体試験結果等から10年程度を見込む。


出典:農林水産省.農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路編】.2023年.246頁. 表 9.2-1 けい酸塩系表面含浸工法(反応型)に使用する材料・工法の品質規格より


 


9(2)イ けい酸塩系表面含浸工法(固化型)


けい酸塩系表面含浸工法(固化型)に使用する材料・工法は、表 9.2-3 の品質規格を満足しなければならない。



*1 品質規格値(案)は、JSCE-K 572-2018 による室内試験での規格値となる。


なお、補修の効果が期待される期間は、上記照査方法として示している室内試験と同様に新設構造物に対する効果として、供試体試験結果等から10年程度を見込む。


出典:農林水産省.農業水利施設の補修・補強工事に関するマニュアル【開水路編】.2023年.251頁. 表 9.2-3 けい酸塩系表面含浸工法(固化型)に使用する材料・工法の品質規格より


凍結融解試験による耐久性の確認(自社試験)

1. 試験概要

反応型けい酸塩混合型表面含浸材の凍結融解に対する耐性を、JIS A 1148 A法による凍結融解試験により確認した。


 


2. 試験体

基板


コンクリート基板 普通ポルドランドセメント使用


配合:水セメント比(W/C)= 50 %


寸法:角柱100×100×400 mm


JSCE-K 572に準拠して作成


 


表面含浸材


反応型けい酸塩混合型表面含浸材:L-OSMO反応型SG(標準塗布量200 g/㎡)


(けい酸リチウム・けい酸ナトリウム・けい酸カリウム配合)


 


3. 試験方法

JIS A 1148 A法による凍結融解試験を1,200サイクルまで試験を行い、相対動弾性係数を確認した。


 


4. 試験結果

相対動弾性係数のグラフを図1に示す。




 


無塗布試験体は、1,200サイクルに到達する前に破壊された一方、【L-OSMO反応型SG】塗布試験体は1,200サイクル経過後も相対動弾性係数が80%と健全性を維持した。


一年間の凍結融解回数は、多い地域で40回ほどと予想すると30年分の凍結融解試験を行ったことになり、 【L-OSMO反応型SG】による生成物(C-S-Hゲルや難溶性固化物)は20~30年は耐用年数があるものと推測される。


 


固化型けい酸塩系表面含浸材について


【L-OSMO反応型SG】には、けい酸リチウムが成分に含まれているので、固化型けい酸リチウム系表面含浸材である【L-OSMO固化型KK】も同様の改質効果が期待できます。


 


【参考】JSCE- K572スケーリングに対する抵抗性試験結果


L-OSMO反応型SG:質量損失抑制率43 %


L-OSMO固化型KK:質量損失抑制率45 %


 


既設コンクリート構造物には【固化型けい酸塩系表面含浸材】、新設コンクリート構造物には【反応型けい酸塩系表面含浸材】をそれぞれ使い分けてインフラ長寿命化にお役立てください。


【けい酸塩系表面含浸材】の耐用年数は、10年程度と農林水産省の開水路補修マニュアルで2023年規定されました。

2012年に刊行された「けい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針」(案)コンクリートライブラリー137号においては、「けい酸塩系表面含浸工法を適用したコンクリートの性能は経時的に低下していくが、その定量的なモデルは現状では示されていない」と案内が出ていました。


自社で実施した1,200サイクルの凍結融解試験は、2012年より前の【けい酸塩系表面含浸材】の耐用年数について定説がない中、けい酸塩系表面含浸工法の再施工の目安とするために実施しました。けい酸塩系表面含浸工法の検討の参考になれば幸いです。


 


 


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