高度成長期に大量に造られたコンクリート構造物の維持管理が重要課題となっています。新設、既設にかかわらず構造物の耐用年数をより長くする様々な工法が採用されています。その中でけい酸塩系表面含浸材は施工性の高さ、経済性から急激に施工例が増加しています。
平成24年7月にけい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案)コンクリートライブラリー137が土木学会より刊行されました。指針(案)は主成分によりけい酸リチウム系、けい酸塩混合型、けい酸ナトリウム系、けい酸カリウム系に分類されました。また改質機構により固化型と反応型に分類されました。
弊社ではけい酸塩混合型・反応型のOsmo(新設・既設総合型)、けい酸ナトリウム系・反応型のOsmo-xp(新設・断面修復後特化型)のけい酸塩系表面含浸材を取り揃えています。
中性化が進行しているコンクリート構造物の耐久性向上に効果がある表面含浸材です。従来の表面含浸材では効果が限定的でした。(弊社製品比較)また、乾燥状態で施工、養生を行うため、新設コンクリート構造物で施工に当り、水の使用量を抑えたい場合に最適です。(新設コンクリート構造物(断面修復後のものを含む)にはOsmo-xp[反応型NETIS HK-070015-V]が有効です)
固化型のけい酸塩系表面含浸材です。コンクリート表層部の空げき、微細クラックから内部に浸透します。含浸の初期段階で主成分の一部が水酸化カルシウムと反応した後、残りの主成分が乾燥にともなって難溶性の固化物となって空げきを充てんする含浸材です。コンクリートの中性化が進行し、コンクリートの表層部の水酸化カルシウムが消失している状況でも、薬剤自体の乾燥により固化が進行し、難溶性の生成物がコンクリートの空げきを充てんし、緻密化します。(中性化を促進させた供試体での透水試験の結果、71%の透水抑制効果を確認しています。)
乾燥固形成分量が施工面積1m2あたり58gです。
Osmo-kkを単独で使用できる範囲は潜伏期(外観上の変状が見られず、鋼材のかぶり位置における塩化物イオン濃度が腐食発生限界濃度(1.2㎏/㎥)に達するまでの期間:鉄筋が腐食していない状態)までです。それ以上劣化が進行している場合は塩化物イオンの除去や断面修復等が必要です。(コンクリートライブラリー137、27頁)
アルカリシリカ反応による膨張抑制を目的としたけい酸塩系表面含浸材の利用はコンクリートライブラリー137の適用対象としていません。(16頁)
Osmo-kkは乾燥状態(目視状況:濡れ色が残っていない状態 指触状況:指は水で濡れない状態:含水率5%以下)で原液150g/m2を2回塗布(計300g/m2)してください。
中性化が進んだ既設構造物は表層がポーラスになっており、現場の環境により状態は同一ではありません。現場で試験施工を行い塗布量を調整してください。(使い切り)
「けい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案)」コンクリートライブラリー137では直接試験による性能確認が義務付けられました。施工後28日以上経過した後実施するものとされました(69頁)。現場において実施する透水量試験を最も信頼性の高い方法として推奨しています。弊社の現場透水量試験器(NETIS HK-120014-A 実用新案登録第3172025・3172498号)壁面用、水平部用、天井面用をご活用ください。
水酸化カルシウムとの反応性を確認。
溶解させた乾燥固形成分が水酸化カルシウムと反応性を有しないこと(固化型であること)を確認した。
ひび割れがほぼ閉塞されたことが確認できる。
ひび割れ透水比 3%(抑制率 97%)
透水量試験
透水比 27%(抑制率 73%)
加圧透水性試験
加圧透水比 24%(抑制率 76%)
吸水率試験
吸水比 73%(抑制率 27%)
中性化に対する抵抗性試験
中性化深さ比 77%(抑制率 23%)
塩化物イオン浸透に対する抵抗性試験
塩化物イオン浸透深さ比 70%(抑制率 30%)
スケーリングに対する抵抗性試験
質量損失比 55%(抑制率 45%)
二酸化炭素濃度5%にした中性化槽内で2週間中性化を促進させた供試体を用いて、JSCE-K572-2012透水試験に準拠した試験の結果です。
供試体 |
透水量(ml) | 抑制率(%) |
|||
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無塗布 | 無塗布平均値 | 塗布 | 塗布平均値 | ||
A-1 | 32.5 | 28.0 | 7.3 | 7.4 | 73.6 |
A-2 | 31.1 | 7.3 | |||
A-3 | 20.3 | 7.5 | |||
B-1 | 17.1 | 23.8 | 6.4 | 6.0 | 74.8 |
B-2 | 20.8 | 5.4 | |||
B-3 | 33.5 | 6.1 | |||
C-1 | 33.7 | 25.1 | 8.8 | 8.7 | 65.3 |
C-2 | 17.6 | 6.8 | |||
C-3 | 23.9 | 10.5 | |||
平均抑制率(%) | 71.2 |
透水量試験終了後の供試体を切断し、断面の中性化の進行の状況を確認しました。
わずかに濡れ色を呈する状態になります。
作業時の排出液や施工した後の構造物から有害物質が溶出することはありません。
①仮設養生 | 前処理や素地調整に伴って発生するコンクリート殻、粉じん及び洗浄水に対して、またOsmo-kkが施工箇所周辺に飛散や汚染の恐れがある場合にはしっかりと養生してください。周辺のガラスや金属に付着しますと固結して取れなくなることがあります。 |
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②前処理 | ひび割れ注入や著しい凹凸の平滑処理、劣化因子を含有した部分および脆弱部分の除去、除去された部分の断面修復を行います。 |
③素地調整 | コンクリート表面のレイタンスや剥離剤をブラスト処理や電動工具等で除去、あるいは高圧洗浄により清掃するなど、Osmo-kkの含浸を阻害する物質を除去してください。 |
④一次塗布 | 乾燥状態(目視状況:濡れ色が残っていない状態 指触状況:指は水で濡れない状態:含水率5%以下:乾燥状態)でOsmo-kk原液1m2当り150gを低圧噴霧・ローラー・刷毛等で均等に塗布します。(原液を容器のままよく混ぜること) |
⑤二次塗布 | 一次塗布後60分程度経過し、Osmo-kkが乾いていること(目視状況:濡れ色が残っていない状態 指触状況:指は水で濡れない状態:含水率5%以下:乾燥状態)を確認のうえ、Osmo-kk原液1m2当り150gを低圧噴霧・ローラー・刷毛等で均等に塗布します。(原液を容器のままよく混ぜること) |
⑥乾燥養生 | 塗布後、コンクリートを乾燥状態に保ってください。 |
⑦洗浄 | 二次塗布後60分程度経過し、塗布前の乾燥状態に近づいたら(指は水で濡れない状態)表面に残った薬剤は水道水を使ってデッキブラシ等で洗い流してください。その後、雨水がかからないように注意し、乾燥状態を保ってください。(24時間程度) |
⑧施工完了時の確認 | 周辺のガラス・金属に薬剤が付着している場合にはただちに流水で洗い流してください。 |
施工要領PDFダウンロード ※施工ビデオをご参照ください
Osmo-kkは5~40℃の直射日光を避けた環境で保管をお願いします。
タフテナー 9kg[30m2施工可能] |
タフテナー 18kg[60m2施工可能] |
※実際の施工の際にはロス率を勘案してください。
(施工ロス率:上向き:15% 横向き:10% 下向き:5%)
原液150g/m2を2回塗布(計300g/m2)
色(薬剤):無色透明
密度(比重):1.100~1.180g/cm3
pH:11.2~12.0
用途 | 既設特化型 |
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種類 | けい酸系リチウム・固化型 |
乾燥固形分率 | 19.4% |
乾燥固形分量 | 58g/m2 |
密度(比重) | 1.100~1.180g/cm3 |
pH値 | 11.2~12.0 |
色(薬剤) | 無色透明 |
含浸深さ | 3mm |
中性化深さ比 | 77%(抑制率 23%) |
塩化物イオン浸透深さ比 | 70%(抑制率 30%) |
透水比 | 27%(抑制率 73%) |
吸水比 | 73%(抑制率 27%) |
質量損失比(スケーリングに対する抵抗性試験) | 55%(抑制率 45%) |
ひび割れ透水比 | 3 %(抑制率 97%) |
加圧透水比 | 24%(抑制率 76%) |
NETIS | HK-070015-V |
中性化したコンクリートでの透水比(※) | 29%(抑制率 71%) |
施工後外観変化 | わずかに濡れ色を呈する程度の変化 |
塗布量(原液) | 300g/m2 |
施工ロス率 | 上向き:15% 横向き:10% 下向き:5% |
塗布対象状況 | 乾燥状態(目視状況:濡れ色が残っていない状態 指触状況:指は水で濡れない状態:含水率5%以下) |
安全性 | 有害物質を検出せず |
注意事項 | 強アルカリ性 |
保管 | 5~40℃の直射日光を避けた環境 |
設計価格(材料) | 2,000円/m2 |
設計価格(材工共) | 3,500円/m2 |
特許 | 特許第4484872号 |
※二酸化炭素濃度5%にした中性化槽内で2週間中性化を促進させた供試体を用いて、JSCE-K572-2012透水量試験に準拠した試験結果です。
参考 透湿度試験:JSCE-K572-2012において透湿度試験の方法が定められておりません。けい酸塩系表面含浸材はその性質上、透湿度試験に関して問題がないためだと思われます。